『死神 イシュタム』                                     イラスト Hangedman  
古代南米には、生け贄の文化があり、アステカの最高神である太陽の神『ケツアルクァトル』と敵対する最強の邪神『テスカトリポカ』を宥めるために生け贄として、生きた人間から取り出した心臓を捧げていた。生け贄となった者、戦死者、自殺者、不幸にも出産で命を落とした者は、死の女神イシュタムが護る宇宙にそびえる巨木の木陰で、彼女に見守られながら安らかに眠ることが許されるのだという。彼女は心優しい許しの女神でもあったため、死神でありながら、民衆から愛される存在でもあった。長い髪の女性で、手には自殺のシンボルである、首つり結びのロープを持っているとされる。

イラストでは、イジメ自殺問題をモチーフとしている。首を吊り自殺した少年が、イシュタムという母胎に還り、イシュタムの力を借りて復讐の処刑を遂げている。
「虐められた方にも責任がある」というが、自覚もなく、他者との交流を深めるために『ツッコミ』と称し予告無く誰かをつるし上げる。そんな現代の学校、会社によく見られるイジメは『自覚無き殺人』であり、『生け贄』を求めるその行為こそ、現代の『テスカトリポカ』であり、『テスカトリポカへの生け贄』という宗教殺人同様、「楽しければ、明るければ、面白ければ何をやってもいい。テレビでやってるから」という、メディアというある種の神か起こした、宗教殺人であると私は考える。それを戒めるために描いた作品。
彼女は許しの女神でもあったが、あくまで死神という側面を強調した。死のモチーフと優しさのモチーフを同時に取り入れるにあたり、妊婦と電気椅子、首吊りロープというビジュアルとし、色遣いも、死を暗示する彩度の低いデザインとした。スパークを描き込んでも、大人しいデザインになったのが嬉しいところである。また、タロットカード(あれ自体はアイルランドの黒魔術の一種と考えられる)の死神のカード(正位置時)には、「死を伴う再生」「痛みを伴う再生」という意味もあるため、妊婦と自殺者、生と死とが混同するデザインとした。アステカにタロットカードは関係なく、あくまで作者の趣味である。
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