『龍王 乙姫』                                   イラストレーション Hangedman       
乙姫、文字通り浦島太郎に出てくる乙姫様である。浦島太郎では、美しい女性の姿でしか描かれていなかったが、原型となった可能性が高いと言われる書物も多く、丹後国『風土記』(現在は逸文のみ)、『日本書紀』『万葉集』等に記述が見られる。「浦島太郎」として現在伝わる話の型が定まったのは、室町時代の『御伽草子』のようだ。話によって亀、鮃、龍、人魚など様々な生物として描かれ、各県に様々な説が散らばっている。縁起の良いものとして亀があるが、亀に変化した乙姫を指すという説がある。また、姉がいるとの説もある。
また徳島では、 明治初年の頃、ある男が夜更けに膳棚竃を通りかかると、美しい女とすれ違った。家に帰ったが恐ろしくなり、3日ほど床についた。当時は乙姫に魅入られたと評判になったという怪談のような逸話が残っているそうだ。

一つ言える事は、地方によって具体像がバラバラである。
ただ共通している事は、普段は人間の女性で、海洋生物(または伝説の生物)が正体ということである。ある意味で神秘的な女神といえよう。

今回もまた、ヒーロー性やデザイン性を重視したデザインである。龍宮城を守る巫女装束に身を包んだ女性の姿で描いた。頭や脚は幾何学的なブロックに分解し、組みなおされるとリュウグウノツカイと呼ばれる深海魚に変化している。ネーミングからも容姿からも乙姫が変化する龍として相応しい存在感がある。この龍王のモチーフとなったリュウグウノツカイは、実際に存在する深海魚であり、極まれにではあるが発見例がある。最大体長7メートルにもおよぶ巨大な魚で、ハワイ沖から日本の太平洋側と、太平洋全体にわたり発見例があるが、まだ生態はよくわかってはいないらしい。日本古来の伝説に登場する人魚の正体もリュウグウノツカイであるといわれている。その中でも松浦静山の「甲子夜話」に現われる人魚の特徴にはリュウグウノツカイと一致する点が多い。インターネット上で見つけた写真では銀色だったが、華やかさを重視するために、熱帯魚であるアジアアロワナのカラーリングを模したデザインとした。荒ぶる神の象徴として手には槍を持たせ、刃は鮫の歯としている。浦島太郎の物語りと共通性を持たせるため、浦島太郎に出てきた亀に乗っているデザインとした。
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