狢とは、百足(ムカデ)のことであり、地方によってだが狐や狸、化け猫の様に霊的に強力な力を秘めると言われている。テレビでも有名な某霊能者が語っていた、彼の祖母の話。
新潟の小さな山村の祭りで、隣の村に若者四人が御神体を取りに行くという祭りがあるという。道中、山中の神社で一泊する慣わしなのだが、毎年男たちが何らかの祟りにあっていた。村人が「また狢にやられた」と言うので、翌年の祭りで、とある若者が「そんな狢は俺が殺してやる」と意気揚々と山中の神社で一泊していた。夜中にふと年寄りの声で「おぶってくれ」という声がする。声はするが姿が無い。その声はだんだん近づき、「ほーれ負ぶされぃ」と聞こえたとたん背中に重いものが負ぶさった。ひっくり返った若者の後ろには誰もいなかったが、よろめいた拍子に狢を一匹踏み殺していた。意気揚々と村に帰った若者はその話を自慢した。すると村の老人が「ところで、お前狢は何匹殺ったんだい?」と問いかけた。「一匹だよ」と若者が答えると「そりゃおまえまずいよ・・・狢ってのはいつも番(つがい)で行動するから、もう一匹が復讐しにやってくるよ」と言った。若者は気にもしないで自宅に帰っていった。
しばらくして、当時田舎ではまだ珍しい、自転車の郵便配達員が若者の家に入っていった。霊能者の祖母は「珍しいこともあるもんだなぁ」と思いその様子を見ていた。その夜、若者は首を絞められ殺された遺体となって発見されたという。
これは民話や神話というよりは怪談というべきであろう。イラストでは狢が敵討ちをするという点、必ず番で行動するという点に着眼して製作した。できればプー○ンと中○人民○和○の『あの人』も描きたかったなぁ。漢字忘れちったい・・・・反省・・・・。
徴兵という形で出兵した兵士の頭を抱く女性、彼女の心が彼女の頭を突き破り、狢となって、戦争を望む権力者達に襲い掛かっている。この女性は兵士の妻であり、兵士は権力者が起こした身勝手な戦争で命を奪われたのだ。『お国を守るため』と言われ無理矢理徴兵され、家庭や夫婦の絆を破壊された妻の憎しみが彼女を復讐の龍虫へと変化させたのである。
国家を形成する最小単位の組織が家庭である。その家庭を蔑ろにし、権力者が自分の欲した戦争のために、他人の命を盾とする。戦争とは、起こすのは必ず権力者である。彼らが自ら戦場に立つということは無く、また一人でも殺された者は被害者に他ならない。被害の多さや勝敗で戦後保障をしたところで、奪われた命は帰ってはこないのだ。戦争被害に国籍や文化は関係ない。個人や一家庭が権力者から奪われるだけの話でしかないのだ。
今のアジアの情勢を見ても、過去の犠牲者の魂を誇らしげに掲げ、戦争を利益にしようとする権力者が利用しているようにしか見えない。これでは戦没者や慰み者にされた女性たちの魂が永遠に浮かばれることは無いのではないだろうか?
『妖虫 狢』                                      イラストレーション Hangedman          
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